先日、東宝本社にて舞台「頭痛肩こり樋口一葉」の製作発表と囲み取材が行われました。
その模様をお届けします!


この日、出演者は舞台扮装姿で登場しました。
--花螢役の若村麻由美さん、ご挨拶をお願いします。
皆さん、本日はありがとうございます。若村麻由美です。
私が演じる花螢は遊女の幽霊で、この「頭痛肩こり樋口一葉」の中では、樋口一葉さんの中で想い描かれる“死への想い”の象徴として登場しています。
ずっと(一葉と)2人で絡んでいるのですが、井上ひさし先生の戯曲の素晴らしいところは、 幽霊と絡んでいるにも関わらずとても笑えるやりとりになっていることだと思います。 私以外の女性たちも1人、また1人とだんだん幽霊になっていき、最後には死ぬのが怖くなくなるというお話になっているのですが、 井上先生はそういうお話を書きたくて、この「頭痛肩こり樋口一葉」を書かれたと伺っています。
この作品はこまつ座の旗揚げ公演から何度も再演されていて、花螢は新橋耐子さんがずっと大事に演じられていた役です。 私は2度程拝見させて頂いて、新橋さんのあまりの素晴らしさに、花螢を演じられるのは新橋さんの他にはいないのではないかとずっと思っていたので、 お話を頂いた時は本当に驚きました。出演させていただけることはすごくありがたかったのですが、まさか自分が花螢を演じることになるとは思っていなかったので、 「私にできるだろうか」というおそれの気持ちの方が多いくらいでした。
3年前の初演で三田さんをはじめ諸先輩方とご一緒させていただいた時は、皆さんが演じられた女たちの話に引きずりこまれるように、 そして皆さんに引っ張り上げてもらって、なんとか幽霊役を務められたと思っています。今回は永作博美さんがこのチームの中に1人で入って来られるということで、 大きなプレッシャーがあると思うのですが…(永作さんへ向けて)大丈夫です。頼りない私がついています。なるべく足手まといにならないように頑張りますので、よろしくお願いします。
先ほど深谷(美歩)さんもおっしゃっていたように、何度観ていただいても素晴らしい作品ですし、参加させていただいている私たち1人1人が愛情をこめて大切に演じていきたいと思っています。 これまでの諸先輩方がそうされてきたように、次の世代にも残していきたい作品ですので、ぜひ劇場へ足を運んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。
劇中での花螢は登場した時から幽霊ですが、司会者より、この日の若村の衣装が実は“生前”の花螢の衣装だということが告げられると、若村自身も驚いていました。
--演じられる役について魅力を感じるところを教えてください。
これは毎年のお盆の時のお話で、私が演じる幽霊が必ず「お盆でございます」と入っていくのですが、実は花螢自身、そもそもなぜこの世をさまよっているのか、 誰かに恨みがあるはずなんだけど誰にどんな恨みがあるのかということが分からず、その答えを探して毎年お盆に樋口一葉のもとに現れるんです。
そしてとうとうその答えを見つけた時には、「恨みをはらすなんていうことは大したことではないんだ」と幽霊なりに思うようになり、 それが観る人たちのさまざまな生きざまの中での“赦す”という想いにもつながっていくように感じています。
また、樋口一葉も含めて皆がだんだんと幽霊になっていき、最後に(深谷さん演じる)樋口邦子が1人、亡くなった皆の想いを背負って歩いていくのですが、 私自身も、祖先や諸先輩方の想いを背負って今があり、その人たちのおかげで今生きているということをしみじみと感じる、本当にたくさんのことを得られる戯曲です。
花螢としては、前回(演出家の)栗山さんに「とにかく幽霊らしくない幽霊にしてほしい」と言われたので、今回はもう少し自分のハードルを上げて、 動き回る場面が多いのですが、幽霊らしさを感じさせないよう、軽やかに、浮遊するように演じられたらと思っています。
--実際に台詞を口にする演者として感じられる井上ひさし戯曲の魅力を、今思い浮かぶお好きな台詞と一緒に教えてください。
先ほど愛華みれさんがおっしゃっていた「あの世」や「宇宙」へのつながりを常に感じる作品なのですが、私の役は幽霊なのでまさにその「あの世」からやって来るものですから、 やはり先ほど申し上げました「お盆でございます」というのが象徴的な台詞かなと思っています。
その他にももちろん素敵な台詞がたくさんあるのですが、特に井上先生の作品で手強いなと思ったのは、台詞がとても音楽的だということです。
すべての台詞がアンサンブルやオーケストラのようで、楽譜に書かれたような戯曲だと思いました。ですから、テンションや気迫というものが皆に必要になってきますし、 一瞬でも気を抜くと足を踏み外してしまいそうで…今思い返してみても、大変優れた戯曲だと感じています。
ここにいる6人皆で手を携えて、しっかりと皆様にお届けできるよう頑張ります。
制作発表の最後には、今年女優として50周年を迎えられた三田和代さんへお祝いのサプライズがあり、似顔絵が描かれたケーキや花束が贈られました。
「舞台に立てることが嬉しい」とお話しされる三田さんの横で、若村もとても嬉しそうにしていました。
つづいて、囲み取材が行われました。
--あらためて意気込みをお聞かせください。
最強のメンバーで臨みます。この夏「頭痛肩こり樋口一葉」を観て、思いっきり笑って、思いっきり泣いてください。
--今日の衣装は花螢の“生前”の恰好ということでしたが、着られてみていかがですか。
私も先ほど初めて知りました。こんなふうに着ていたんだと思うと、役への深みが増します。
今日のこの衣装を見た方は、本番で「若村が出て来ない」と戸惑われてしまうかもしれないですが…本番は白い着物で出ますので、そちらも楽しんで頂けたらと思います。

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」は8月5日(金)より日比谷シアタークリエほか、
7会場にて上演いたします。
皆様のご来場を心よりお待ちしております!
「頭痛肩こり樋口一葉」公式サイト
http://www.tohostage.com/ichiyo2016/